
Land of Navajo Spirits
モニュメントバレーは、アメリカ西部のアリゾナ州とユタ州の州境に位置する広大な砂漠地帯で、先住民ナバホ族の自治地域「ナバホ・ネイション」の中にあります。
赤く広がる砂漠の大地から、まっすぐにそびえ立つ巨大な岩山「ビュート」や、幅広い台地状の「メサ」が点在し、その独特の景観は“アメリカ西部の象徴”として世界中に知られています。 数々の西部劇映画をはじめ、近代でも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ」など多くの映画、CM、写真集のロケ地として使われてきたため、誰もがどこかで一度は目にしたことのある風景といえます。
観光地としての魅力も非常に高く、自家用車やツアー車で岩山の間を走る「バレードライブ」、ガイド付きでしか入れない神聖なスポットを巡るナバホ族のツアー、ビュートを背景にした写真撮影、そして朝日や夕日が岩肌を赤く染める絶景など、見どころは尽きません。また、周囲に明かりがほとんどないため、夜には満天の星空が広がり、天の川を肉眼で見ることもできます。
モニュメントバレーは、単なる景勝地としてだけでなく、ナバホ族の文化・歴史が息づく特別な場所です。
ビジターセンターやギフトショップでは、ナバホ族の工芸品や文化に触れることもできます。
自然の造形美と先住民文化が調和したこの地は、アメリカでも特に独自性と神秘性が際立つスポットとして、
多くの人々を魅了し続けています。
モニュメントバレーはアメリカの国立公園ではありません。
正式にはモニュメントバレー・ナバホ・トライバル・パーク(Monument Valley Navajo Tribal Park)と言います。
先住民ナバホ族が自治する ナバホ・ネイション(Navajo Nation)の一部として管理されている公園です。
アメリカ合衆国の国立公園ではなく、ナバホ族による「部族公園(Tribal Park)」という位置づけになっています。
具体的には:
つまり、モニュメントバレーはナバホ族の土地の一部であり、ナバホ・ネイションが直接管理する公園です。
ナバホ・ネイションは、アメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン)の中でも最大級の人口と最大の居留地面積を持つ、非常に影響力のある部族国家です。彼らは自らを「ディネ(Diné)」(ナバホ語で「人々」の意)と呼びます。
アメリカ最大の先住民部族の一つとして、非常に強固なアイデンティティと自治権を維持しています。
基本データ
| 正式名称 | ナバホ・ネイション(Navajo Nation) |
| 総人口 | 約40万人(登録部族員数/2020年国勢調査などでチェロキー族を抜き全米最大規模) |
| 保留地居住者 | 約17万人(残りの半数以上は保留地外の都市部などに居住) |
| 首都 | ウィンドウ・ロック (Window Rock) ※アリゾナ州 |
| 面積 | 約71,000キロ平方メートル(北海道より少し小さい程度) |
| 位置 | アリゾナ州、ニューメキシコ州、ユタ州の3州にまたがる |
最も複雑で興味深い点として、ナバホ・ネイションは、アメリカ国内にありながら「国内従属国(Domestic Dependent Nation)」という特別な地位を持っています。
完全に独立した国ではありませんが、州(アリゾナ州など)からは独立した強い自治権を持っています。
国家の中の国家(Nation within a Nation): 彼らは「部族主権(Tribal Sovereignty)」を持っており、独自の政府、議会、警察、裁判所を持っています。
州法からの独立:
例えば、ナバホ・ネイション内では、アリゾナ州やニューメキシコ州の警察には基本的に管轄権がありません。交通ルールや民法などはナバホ独自の法律が優先されます。
サマータイム(Daylight Saving Time)も、アリゾナ州の大部分は採用していませんが、ナバホ・ネイションだけは採用しているため、同じ州内でも時差が発生するという珍しい現象が起きます。
連邦政府との関係:
しかし、完全な独立国ではないので外交権や通貨発行権はありません。
また、FBI(連邦捜査局)や連邦法の管轄下にあります。重大犯罪:
殺人などの重罪は、部族警察ではなくFBIと連邦検察が担当します(主要犯罪法 - Major Crimes Act)。
非先住民の犯罪:
かつては部族警察が保留地内の「非先住民(白人など)」を逮捕・裁判にかける権限が非常に限定されていましたが、近年法律(VAWAなど)が改正され、DV(家庭内暴力)などに限り、部族裁判所での裁きが可能になるなど、権限は少しずつ拡大しています。
ナバホ・ネイションには、彼らの価値観を反映したユニークな法律や制度があります。
アルコールの販売・所持禁止:
基本的に居留地内でのアルコールの販売や公共の場での飲酒は違法です。これは過去のアルコール依存の問題に対処するための厳しい措置ですが、一部のカジノなど例外的に認められる場所も出てきています。
ピースメイキング(Peacemaking):
ナバホの裁判所には、西洋的な「裁いて罰する」システムとは別に、伝統的な「調停(Peacemaking)」システムがあります。当事者同士が話し合い、関係を修復し、調和を取り戻すことを目的とした修復的司法です。
ナバホ族のジュエリーは世界的にも有名で、重要な収入源かつアイデンティティの一部です。
19世紀半ばにスペイン人やメキシコ人から銀細工の技術を学びました。
ターコイズ(Turquoise):
ターコイズはナバホ族の文化的・精神的象徴とも言える存在で、世界的にも有名です。
ナバホ族にとってターコイズは「空」、「水」、「生命」、「幸運と保護」を象徴する特別な石です。儀式や装飾品に古くから使用されてきました。
シルバーワーク(銀細工):
ナバホ族のシルバーワーク(銀細工)はアメリカ先住民アートの中でも特に高い評価を受けています。
重厚で力強いデザイン、存在感のあるスタイルが人気です。
ナバホ族が銀細工の技術を習得したのは19世紀半ばですが、独自の努力により神聖な石であるターコイズを銀細工に組み込むことで、その価値と美しさを飛躍的に高めました。
ほとんどの人がイメージするナバホジュエリーは、ターコイズとシルバーを組み合わせたものだと言えます。
今では「アメリカ先住民ジュエリー=ナバホ銀細工」というほど知名度が高いものとなりました。
画像 Author: Silverborders|Source: Wikimedia Commons|License: CC BY 3.0
平らな大地に岩山が立っているのに、なぜ「谷」と呼ぶのか不思議だと思いませんか?
実は、かつては高い台地だった場所が浸食され、「削られて残った低い部分」が谷のように見えることから、この名がついたと言われています。
約3億年前、この場所は巨大な盆地(低地)でした。 遠くの山々から川が流れ込み、土砂や砂が長い時間をかけて水底に何層にも積み重なっていきました。この積み重なった層が、のちに岩山を作る「材料」となります。
古代の盆地に川が土砂を運び、水底に地層が堆積していく様子。
約6500万年前、地球のプレート運動によって、積み重なった地層が巨大な力で押し上げられました。かつての低地は標高の高い「コロラド高原」の一部となり、平らだった地表には亀裂が入りました。これが、次の「浸食」のきっかけとなります。
地層が隆起し、巨大な台地となって亀裂が入った様子。
持ち上がった大地を、川、雨、風、氷が長い時間をかけて削っていきました。
硬い地層が「傘」の役割を果たし、その下の柔らかい層を守ったため、周囲は削り取られてもそこだけが柱のように残りました。こうして、現在のビュート(岩山)が形成されたのです。
侵食により「台地」→「メサ」→「ビュート」→「スパイア」と縮んでいきます。
一時的に細いスパイアだらけの景色になりますが、それらも最終的にはすべて崩れ去り、平らな大地に戻ると予想されています。
現在、岩山が立っていられるのは「傘」の役目をしている一番上にある硬い岩(キャップロック)が下部の柔らかい層を守っているからです。
しかし、風雨や冬場の凍結(水が氷になって膨張し、岩を割る力)によって、スパイアが細くなりすぎると、ある日突然、バランスを崩して上の「傘」が落ちてしまいます。傘を失った下の柔らかい土台は雨風に対して無防備になり、地質学的な時間スケールでは「あっという間」に削り取られ、土砂となって流されてしまいます。
同時に、その背後にある巨大な台地(メサ)の壁も削られ続けています。壁が削られて後退していく過程で新しい部分が切り離され、それがまた新しいビュートやスパイアとして生まれ変わる可能性があります。
そうすると「今の場所」にあるモニュメントバレーは消滅しますが、少し離れた場所(現在の台地の奥)に「第二、第三のモニュメントバレー」が誕生している可能性もあると考えられています。
もっとも、それは数百万年、あるいは数千万年も先の話なので、その頃には人類はすでに地球に存在していないかもしれません。
モニュメントバレーの気候は乾燥した高原性砂漠気候です。ケッペンの気候区分でいうと「BSk(ステップ気候 / 寒冷ステップ気候)」、あるいは場所によって「BWk(砂漠気候 / 寒冷砂漠気候)」に分類されます。
統計では年間の晴天日が約300日もあり天候には非常に恵まれている場所です。
主な特徴:
● 1日の寒暖差が激しい
乾燥しているため、昼と夜の気温差が非常に大きいです。夏でも夜は長袖が必要なほど涼しく(時には寒く)なります。
● 四季がはっきりしている
夏(6〜8月): 日差しは強烈で気温は30℃を超えますが、湿度が低くカラッとしています。午後に突然の雷雨(モンスーン)があるのも特徴です。
冬(12〜2月): 氷点下になり、雪が降ることもあります。「赤い岩に白い雪」の景色が見られる季節です。雪が積もった風景はまさに荘厳で美しさは格別です。
| 区分 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平均気温 | 1 | 4 | 8 | 12 | 17 | 22 | 26 | 25 | 20 | 14 | 7 | 2 |
| 平均最高気温 | 7 | 10 | 14 | 18 | 23 | 29 | 33 | 32 | 27 | 20 | 12 | 7 |
| 平均最低気温 | -6 | -4 | -1 | 2 | 6 | 11 | 16 | 15 | 10 | 4 | -1 | -5 |
赤い岩山が連なるモニュメントバレーは、乾燥した大地という印象とは裏腹に、多様な動植物が暮らす自然豊かな地域です。 ジャック・ラビットやミュール・ディア、コヨーテ、ガラガラヘビ、ロードランナーなど、厳しい環境に適応した野生生物が見られます。 また、ウチワサボテンやユッカ類などの植物は、ナバホ族の暮らしや伝統的な知恵とも深く結びついています。
※動物はすべて野生です。日中に必ず見られるとは限りませんが、 運が良ければ自然の中で出会えることもあります。
荒涼とした大地にも、多様な植物が力強く生育しています。 ナバホ族は古くからこれらの植物を薬草や生活資源として利用してきました。
手袋(Mitten)の形をした2つの岩山で、モニュメントバレーを象徴する風景。ビジターセンターやザ・ビューホテルから見える景色です。真ん中の少し奥まったビュートはメリック・ビュート(Merrick Butte)
西部劇映画の巨匠ジョン・フォードが好んだポイント。
「駅馬車」、「荒野の決闘」、「黄色いリボン」など数多くの名作がモニュメントバレーで撮影されています。
馬に乗ったナバホ族が岩の先端に立つ象徴的な写真を撮れるスポットとして有名で、ほとんどのツアーで必ず訪れる場所です。
ナバホの聖なる場所の一つ。かつて広がっていた岩盤が長い年月をかけて削られ、周囲が失われた結果として残った「スパイア(岩柱)」です。モニュメントバレーの地形がたどる最終段階を象徴する存在です。
長い侵食の末に残った岩柱であり、ナバホの聖なる場所の一つ。 トーテム・ポールは、かつて広がっていた岩盤が長い年月をかけて削られ、周囲が失われた結果として残った「スパイア(岩柱)」です。モニュメントバレーの地形がたどる最終段階を象徴する存在です。
「世界一の日の出」にも選ばれたことがあるほど美しい光景。「ザ・ビュー・ホテル」や「グールディングス・ロッジ」に宿泊して、刻一刻と変わる空の色を楽しむのが定番です。朝日や夕日に染まる赤い岩山は、時間帯によって全く異なる表情を見せます。
全長約27km(17マイル)の未舗装路。主要な11箇所のポイントを自分のペースで巡ることができます。ただし、未舗装のためオフロード車以外は難しく、また、ナバホのルールにより脇道に入ったりコースを少しでも外れたりすることは固く禁じられています。
有名なアーチや、古代遺跡などがある「バックカントリー」エリア(秘境)」へ行くためにはナバホ族のガイド付きツアーに参加しないと絶対に立ち入ることができません。
ナバホ族ガイドによる文化や伝統の披露、立ち入り制限区域の見学など、より深い体験が可能です。
ラスベガス発のツアーにはナバホ族ガイドツアーが含まれていることが多いです。レンタカーやマイカーでモニュメントバレーを訪問するお客様向けに、弊社ではナバホ族ガイドツアーのみの手配も可能です。